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概要

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ビジネス法務Q2A友人と共同し株式会社を設立しましたが、経営に対する考え方に隔たりが生じてきました。もう共に歩んでいくのは難しいと思っておりますが、取りうる手段としてどのような選択肢があるのか教えてください。  会社を去ることと、会社に残って指揮を執ることのいずれをご希望ですか?立場の違いで検討する内容が異なってきます。退任する場合は責任の範囲が気になるところでしょうし、残留する場合は退任した方の会社への関与が気になるところでしょう。それぞれの立場から眺めてみましょう。共同経営の解消志太榛原支部見城 美妃Qvol.113 ホーツーあなたに寄り添う法律家13 静岡県司法書士会 取締役を辞めたい…辞任 自分の意思でいつでも辞任できます。 但し、取締役と会社の関係は民法上の委任に関する規定に従うとされており、やむを得ない事由がある場合を除いて、会社にとって不利な時期に辞任した場合には損害賠償請求を受ける可能性を考慮する必要があります。 取締役を辞めさせたい… 解任決議 辞任を促すのも一つの手段ですが、決議による方法もあります。累積投票により選任された取締役を解任する場合を除き、株主総会の普通決議で解任することができます。  但し、任期満了前に解任された取締役から、正当事由の不存在を理由に、損害賠償請求を受ける可能性を考慮する必要があります。その賠償の範囲は「残存任期期間中と満了時に得られるはずであった利益(所得)の損害を指すものと解するのが相当である」とされており、解任決議に踏み出す際にはそれなりの心と資金の準備が必要になりそうですね。 株式の買取り 取締役から外れたとしても、その方が会社の株式を保有していれば、依然株主として経営に関与し続けることになります。解任されたにせよ、辞任したにせよ、任期途中で役員から外れた者が、今後の経営に協力的であるとは考えにくいものです。ですから、退任に併せて株式の譲渡等その後の保有についても交渉しておくことが必要になってくるでしょう。 取締役の責任 取締役はその任務を怠ったときは、会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負わなければなりません。また、職務を行うについて悪意または重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負わなければなりません。 取締役は辞任後も、在職中に生じた前記損害については責任を負うことになりますが、退任後に生じた損害に対しては責任から解放されます。 退任した旨の登記は会社の代表者が行うものであり、退任者が行うものではありません。仮にこの退任登記が未了であって、退任者を未だ取締役であると信じて当該会社と取引した第三者がいたとしても、積極的に取締役として対外的または内部的な行為を敢えてした場合を除いては、責任を負う必要はないとされています。しかしながら、登記が未了であることを知りつつ放置していたとなれば、その責任を問われかねません。その際はご自身から会社に登記手続請求を行うようにしましょう。 まとめ 会社設立時には一致団結していた仲間が、修復不能な関係になってしまうことは、残念ながら起こりうるものです。現行法上、会社の形態によっては取締役の任期を最長十年と定めることができますが、このような事態も見据え、敢えて任期を短く定め、定期的に体制を見直すことは、経営基盤の正常化を図る一つの手段と捉えることができます。