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概要

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事件簿より破産免責とパチンコ 2浜松支部 武田 伸二借金の原因が一見ギャンブルでも裁量免責が受けられる? 昨年の4月頃、事務所の近くに住むAさんから債務整理の相談を受けました。 Aさんは43歳の一人暮らし。清掃員のアルバイトで収入は月6万円位しかありませんでした。平成21年頃より銀行とクレジット会社から借金をしていたのですが、ついに行き詰まってしまいました。Aさんの借金の総額は約150万円でした。 幼い頃より酒好きの父親から暴力を受けていたAさんは、中学卒業後に家を飛び出したまま、定職にも就くことなく仕事を転々とするその日暮らしの生活を送っていました。 Aさんの借金の総額はそれ程多くありませんが、現実問題として月6万円の収入では生活することさえままなりません。そこでAさんに対し、生活保護の受給と自己破産による借金の清算を勧めました。 ただ、Aさんの話を聞くと、借金をパチンコ代に充てていたということが分かりました。 破産法では「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」は免責不許可事由に該当すると定められており、仮にAさんが破産申立てをしたとしても、法的には借金の支払義務が免れない可能性も残ることとなります。 そこで、私はAさんに、どうして借金をしてまでパチンコをしてしまったのかを時間をかけて詳細に聞いていきました。 するとAさんは、「収入が少なく、家賃や電気代を支払うことができないこともありました。仕事も不定期で、毎日その日暮らしでした。そんなある日、仕事で知り合ったFさんにパチンコ屋さんに連れて行かれ、なけなしの500円がたまたま3000円になりました。それがきっかけで、生活費が足りないときはパチンコ屋に行くようになってしまいました」と涙を流しながら話してくれました。 Aさんは、パチンコをしていても楽しいとか、興奮するといったことはなかったと言っていました。とにかく、生活費を稼ぐ手段としてパチンコを繰り返すしかなかったと言うのです。 破産法1条には「この法律は、支払不能状態又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする」と記されています。 今回のように、借金の原因が、一見ギャンブルであったとしても、詳細に経緯を聞いてみると決して自ら好んで浪費をしたとまでは言えないことに気付かされることがあります。そのような場合、私は、本人の代弁をするつもりで詳細な経緯を書面にまとめて裁判所の理解を求めるようにしています。 破産法には裁量免責という規定があり、免責不許可事由が存在すると認められる場合でも、その程度が比較的軽微であり、破産者の経済的再生のために必要であれば、裁判官の裁量により免責を許可することができるとされているからです。 結局、Aさんも無事に裁量免責を受けることができました。 しかし、破産は借金を整理する手段にしかすぎません。Aさんにとって大事なことは、収入を得る道を見つけて自立していくことだと思います。Aさんには是非立ち直ってほしいものです。破産免責!?!?vol.114 ホーツーあなたに寄り添う法律家?? 静岡県司法書士会