ブックタイトルho2vol115

概要

ho2vol115

事件簿より2浜松支部　大澄 正人詐欺サイトに嵌る。騙された方より、騙した方が圧倒的に悪い。　2度目の面談では、佐藤さん（仮名）は、饒舌だった。最初の相談のときには、あんなに口が重かったのに・・・　佐藤さんの相談は、借金の相談で始まったが、その使途はサクラサイトのポイント購入であった。サクラサイトは、メールの送受信がサイト上でしかできない仕組みになっている。メールを送受信するたびに有料のポイントが必要になる。ポイントは、サービスごとに定められており、サイトのメールを読む毎に１０ポイント、メールを送信する毎に１０ポイント、写真を添付する毎に２５ポイントかかり、１ポイントは１０円で購入する。１通の短いメールを読むだけで１００円かかるが、メールアドレスを相手に送信するのは禁止されているので、ポイントを購入せざるを得ないのだ。　サイトにアドレスを登録すると、短時間に１００通を超えるメールが来る。無料で読めるのはタイトルか最初の３０文字程度だけで、内容を全部読もうとすれば、ポイントを使わなければならない。　メールを続けさせるために、次のようないくつかのパターンがある。１）異性との出会いを求める２）芸能人に会おうとする３）金銭をもらおうとする　佐藤さんは「有名な芸能人が息抜きに話のできる人を求めている」というメールを目にしたのが始まりだった。携帯電話に残された数百通のメールを見せてもらったところ、芸能事務所の統括役、マネージャー、本人と３人の登場人物が存在していた。〈マネージャーから〉【※お知らせ※】アドレス交換は可能か。今すぐ『結果』をお知らせします。『可能』であるのを前提に聞いて頂けますか？お返事はココから　http://●●〈統括役から〉≪≪※選択必須※≫≫今向かわせますので即選択を！　⇒　待ち合わせ付近に大き目の駐車場は御座いますか？　⇒　［はい］o［r いいえ］　　お返事はココから　http:// ●●〈本人から〉【※何も考えずに！※】会いましょう！　会わないことにはアドレスを渡すことは叶いませんので…。　上からいつでも動ける体勢でと…。　　お返事はココから　http:// ●●と続いていく。佐藤さんがしばらく連絡しないでいると・・・〈統括役から〉一言いいます。こちらは最高の形で「現地到着の準備が整った！」ということです。　ラストを飾ります！　即折り返して下さい！　お返事はココから　http:// ●●〈統括役から〉私は嫌われてもかまいません、しかし彼に罪は御座いません。　連絡先交換を実現することで貴女と彼の両者を救えるのですからね？お返事はココから　http:// ●●と連絡を促すメールが何度も続いた。数百通のメールを整理すること自体も結構な作業であった。すべてのメールタイトルは、課金されるメールを読むようにし向けられているのである。業者からのポイントのサービスに関するメールも頻繁に届いていた。　優しい佐藤さんは、なんとか会って慰めようと考え、朝から晩までサイトを眺め、メールを送り続けた。そのときの精神状態は「会わなければこの人は死んでしまうかも」と思っていたという。　佐藤さんは、当初はクレジットカードのキャッシングを利用していたが、すぐに借入限度額いっぱいになり、サラ金から借入れをしてポイントを購入し続けた。借金は１週間で２００万円を超えてしまった。　最初の相談で、サクラサイトが詐欺であることを説明すると、佐藤さんも「やっぱり」と落ち込み、自分を責め、沈黙が続くのであった。　「でもね」私は言わなくてはならなかった。「騙される方が悪いのではなくて、騙す方が圧倒的に悪い」　２度目の面談のときには、佐藤さんは吹っ切れていた。佐藤さんにとって、今回の経験はどんな意味をもつのだろうか。目の前の依頼者の気持ちの変化は、私に気合いを入れてくれたのである。あるサクラサイト被害者の告白??vol.115 ホーツーあなたに寄り添う法律家静岡県司法書士会