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概要

ho2vol115

利用促進法はどのようなことを定めているのか? ここで知っておいていただきたいのは、利用促進法は個別具体的な施策について定めた法律ではなく、成年後見制度の利用を促進するための「基本理念」や「基本方針」等を定め、それらを実現するための措置をどのように講じていくかの道筋を示した法律であるということです。 この法律で実務の何が変わるのですか?と問われれば、「成立しただけでは何も変わりません」ということになります。抽象的な3つの基本理念と11の基本方針 イメージ図をご覧ください。利用促進法は、3つの基本理念を置いて、その施策等の策定・実施を国等の責務として定め、基本理念に基づく11の基本方針を定めて法制上・財政上の措置を講じることを定めています。ただ、どれも抽象的な記載に留まります。一つ一つの基本方針を現状と重ね合わせてみれば、「おおよそ、○○の問題についてのことだな」と理解はできますが、やはり抽象的な記載に留まります。具体的に「○○の問題はこういう施策で解決しよう」という内容までは含んでいません。例えば、イメージ図の基本方針3では「成年被後見人等の医療等に係る意思決定が困難な者への支援等の検討」を定めています。これは、現在、実務上問題となっている「医療行為の同意」の問題(後見人等には、医療行為について同意する権限はなく、本人に同意を求めることができない状況下で手術をすべきかどうかにつき判断を迫られたときに決定を下す正式な権限者が不在となる問題)に言及していると読み取れますが、それをどういう方向で解決していくのかについては明言していないわけです。 そして、それら抽象的な基本理念・基本方針に基づき、国は、成年後見制度利用促進会議・成年後見制度利用促進委員会という組織によって「基本計画」を策定しなければならないことが定められ、地方公共団体は、国で定める基本計画を勘案して、基本的な計画を定めるよう努めることや成年後見等実施機関の設立等の措置を講ずるよう努めること、が定められています。地方公共団体は、義務ではなく、措置を講ずることが努力目標となっています。限られた時間の中で中身を血肉化していく 総じて、利用促進法は、理念・方針のみを定め、その中身を血肉化していくことはこれからの活動に委ねた形となっています。 また、それら血肉化する作業には時間的な制限が付されています。基本方針に基づく措置等に関しては「この法律の施行後3年以内を目途」として講ずることとしていますし、内閣府に置かれる成年後見制度利用促進会議及び成年後見制度利用促進委員会は施行の日から「2年を超えない範囲内において廃止し・・・」となっています。 重ねて言いますが、利用促進法は個別具体的な施策を定めた法律ではありません。前述のとおり、その中身を血肉化していくことはこれからの活動に委ねられています。そして、(国レベルでの基本計画策定はともかくとして)努力義務に留まっている地方公共団体レベルでいかなる措置を講ずるかは、これからの皆様の活動次第でいかようにも変わっていくものだと思いますし、時間的な制約もあります。 「成立したからよし!」とするのではなく、これからが大事な法律であることを皆さんにはご留意いただき、お住まいの自治体がどのような措置を講じていくのかに注視するとともに、より充実した措置をとるよう自治体に働きかけ等の活動をすることにつき、ご助力いただければと思います。成年後見制度利用促進法の概要特集2平成28年5月13日、成年後見制度の利用の促進に関する法律(以下、「利用促進法」といいます)が施行されました。その成立過程については、特集1の対談内に詳しく論じられていますので、ご参照ください。継続した注視を!国に基本計画策定を義務化??vol.115 ホーツーあなたに寄り添う法律家静岡県司法書士会