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概要

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谷澤相談室主宰・アサーティブジャパン認定講師静岡市スクールカウンセラー谷澤 久美子氏コーディネーター司法書士名波 直紀氏佐藤 麻妃氏察的実践者という専門家像の言葉どおり反省し、常に省察しながら次の行動の在り方を手探りで模索し、修正を繰り返していきたいと感じています。谷澤/自他を尊重したコミュニケーションは、自信にも繋がります。この研修はコミュニケーション力を高めるためのものでしたが、もう一つの目標として、相談員の方々に自己理解を深めてもらうことも挙げていました。 相談員という立場は、相手のネガティブな感情に触れます。そんなとき、自分の感情も揺れることがあり、「私はそんなことで揺れない」というのは過信とも言えます。揺れる自分を理解すること、どんな状況だと揺れるのかを知る。そんなことを知ってもらいたいと考えていました。佐藤/大澤さんから「振り返りが大切」とお聞きし、本当にそのとおりだと思います。コーディネーター/今後は、コミュニケーション力がさらに重要な社会になっていくでしょう。また、複雑化し、多様化していく、そんな気がします。さて、実際に「司法書士総合相談センターしずおか」として電話相談を受ける際に、心掛けていることをお聞かせください。佐藤/ほとんどの方が、ご自身が抱えている問題について順序立てて話すことができません。まずはその困りごとを整理し「?でお困りなのですね」と伝えることで、真の悩みに気付く場合もあります。そして、真の悩みに気付くと解決法も見えてくるので、司法書士へ依頼することをおすすめしています。大澤/人は誰しも、自分自身の物語を構築して生きていると言えます。問題を抱えた相談者の多くは、その物語を語れなくなってしまっているため、解決への道を歩むことが難しくなってしまっていると思います。 ひたすら聞き、対話することで再構築を手助けする。最終的に、自分の言葉でその物語を語ることができるようになるのが、再構築への第一歩だと思います。コーディネーター/自分で描いていた自分のストーリーなのに、想定外のことが起きるとどうしてよいのかわからなくなってしまうのですね。そして言わなくてもわかっているだろう、ではダメ。言語化して共有、そして共感。対話がやはり大切なのですね。大澤/もう一つ大切なのは、やはり自他尊重であること。例えば「その問題に対して〇〇という権利があなたにはある」と軽々に言ってしまうと、その権利メーンの物語になってしまい、事態が膠着化し、より複雑化するおそれもあります。自分だけを尊重するような物語を構築するサポートをしてしまうと、問題は一層困難化するかもしれません。コーディネーター/大澤さんが弁護士として依頼者から相談を受ける際、どのようなことを心がけていらっしゃいますか。大澤/私はいつも「何も知りません」「教えてください」という気持ちで、お話を伺うことにしています。これを「無知の知の専門性」といいます。 あと、ケアが大事ともいわれます。例えば敵意を示す相談者に対しても、ケアの姿勢で聞いていると、だんだんとその人自身が相談相手をケアできるようになってくる。その「ケア」は、次第に事案の相手方にも向けられるようになる、ケアの伝染ですね。自他を尊重するという気持ちが芽生えてくる。そこに自他尊重の物語が生まれるかもしれません。谷澤/相手とコミュニケーションする前に、自分に嘘をつかないことこそケアだと思っています。複雑な問題が持ち込まれたときに「困ったな」「どうすればいいんだろう」と感じる自分を許し認める。これは本当に大切。人間困っていいんです。 先ほど佐藤さんがおっしゃっていたように、整理できていなかった問題を言語化し伝えたことがぴったりだと、相談者はすーっと気持ちが晴れるはずです。さらに「それでお困りだったんですね」と共感されると、「あ、わかってもらえたんだ」って。大澤/「私は何も知らない」というスタンスでお話を伺っていると、相手は自分の言葉であらゆる角度から説明する必要があります。そして、こちらが素人の立場で質問を投げかけていくと「あれ?」と答えられない個所が出てくることがあるんですが、実はそこに問題点があることがほとんど。そういう形で、不明点を解明する方法もあります。コーディネーター/対話の過程の中で整理でき、問題が浮かび上がってくることが多くある。だから、そういうやり取りが必要だということですね。多様化が加速する現代社会におけるコミュニケーション力の大切さとは3 vol.116 ホーツーあなたに寄り添う法律家静岡県司法書士会