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概要

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谷澤 久美子氏谷澤/アサーティブの考え方は、実は人権から始まっています。アサーティブジャパンではコミュニケーションの権利を「失敗する権利がある」「わかりませんという権利がある」など、12項目挙げているんですが、その中に、ぜひ司法書士の方々にお伝えしたい権利があります。「私には、他人の悩みの種を自分の責任にしなくてよい権利があります」です。自分のできることはここまでという境界線を持っていただきたいです。また「わからない」と言う権利は、多くの人を救い笑顔にしています。佐藤/「わからない」「困った」と不安に感じている自分を理解する、つまり、自分を客観視して、それでも大丈夫なんだ、と立ち止まってよいということですね。佐藤/平成21 年に静岡県司法書士会調停センターふらっとが法務省の認証を受けてスタートしましたが、設立当初、相談こそあれ調停の申し込みには繋がりませんでした。原因をいろいろ検討した結果、中立公正であろうとするあまり、あまり深く話を聴くことは好ましくないと思い込み非常に淡白な聴き方になっていることに気付きました。肝心の「話を聴く」という姿勢が強く出せていなかったんですね。 そこで、まずは実績を積むことを意識して、専門的に利用相談を受ける会員2名を選定し、その2名で集中的に利用相談を受けるようにしたところ、平成27年には調停の申込件数が5件。うち相手方が調停をすることに応諾したのが5件、平成28年は申込件数が5件、うち応諾は2件となって、ようやく実績が積み上げられてきました。コーディネーター/素晴らしい実績ですね。具体的にはどのようなことに気を付けて取り組んでいらっしゃるのですか?何かエピソードがあればお聞かせください。佐藤/お金を払ってほしいという請求を受けている人が相談に訪れた場合、相手方は呼び出しに対し、支払ってもらえる可能性があるので調停に出席する確率は高いですが、逆の場合は、呼び出しに応じないケースも少なくありません。しかし、よく話を聴くとその方にも言いたいことや実は謝りたいという気持ちがある場合がほとんどです。そんな方には、調停は調停人が誰かを責める場所ではない、あなたが言いたいことを自分の言葉で話せばいいんですよとアドバイスをすると、応諾に結びついたというケースがありました。谷澤/怒っている人は、何かしら言いたいことがあるんですよね。 どちらが正しくてどちらが間違っているか。そんな二元論ではなく、話し合いで解決できる仲間になれたらいいですね。それを実践できる場を提供しているのが「静岡県司法書士会調停センターふらっと」なのですね。佐藤/怒っているときは、そのままを口にするのではなく、一度深呼吸をして、なぜ怒っているのかの「なぜ」を伝えてみたら?と。怒っているのは相手もわかっているので、その「なぜ」を伝えるのが重要だと思うのです。コーディネーター/「調停人が答えを出さないなんて、それで答えは出るの?」と聞かれたことがありました。その際、お互いがこの場に出向いたということこそが「答え」を出そうとしていることの現れであると説明をしました。何が正しく、こうした方がよいと言ってあげることが正しいのではないのです。 調停人も当事者も、みんながアサーティブになれればよいですね。谷澤/アサーティブではない言い方として、アサーティブジャパンでは「ドッカン」「オロロ」「ネッチー」の3つを挙げています。「ドッカン」は自分が正しいとだけ主張する攻撃的なパターンのこと。黙ってしまうのが受身的な「オロロ」。そして、攻撃性を隠しながら相手をコントロールしようとする作為的な「ネッチー」。 アサーティブを学んだ私も、実は「ネッチー」なパターンを使うときがあります。大澤/若い頃、大きな商談での交渉に同席した際、相手の態度があまりにも不遜だったので、「黙って聞いてりゃ、何ですかその言い方は!」と怒鳴ってしまったことがあります。あとで冷静になって上司に謝ったところ「よくぞ言ってくれた」と。今考えてみると、その上司こそアサーティブな方でしたね。 その商談は破棄されることなく、相手の態度も改まり大人の話し合いができるようになりました。ただ、のちに上司から「実はあの後大変だったんだぞ」と言われ、反省しましたよ。谷澤/いつもアサーティブでいなくては、というわけではなく、「ドッカン」も「オロロ」も「ネッチー」も使いながら、人間生きていくものだと思います。 その中で「アサーティブ」という方法を知っていること、そして「自分は時々『ドッカン』を使ってしまう人間だ」ということを理解していることが大切なのです。コーディネーター/佐藤さんが相手方の呼び出しに成功しているのは、佐藤さんが「素の自分」で対応しているからだと感じました。「ドッカン」な大澤さんも、大澤さんの「素」、と言えるのかもしれませんね。司法書士の役目は、答えを与えるのではなく当事者同士がアサーティブでいられるようにサポートすること4vol.116 ホーツーあなたに寄り添う法律家静岡県司法書士会