ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

ho2vol116

名波直紀 氏大澤 恒夫氏 × 谷澤 久美子氏 × 佐藤 麻妃氏コーディネーター/名波 直紀氏「未来を切り開くコミュニケーションのチカラ」特集1座談会谷澤/過去にメディエーションを学んだ際、共感し合うワークを行ったんですが……私のそれは、嫌味に感じると言われてしまったことがあります。「あなたは共感しようとして共感している」と。佐藤さんの応諾率アップの理由は、「素」というところにあるのでしょうね。大澤/なかなかできることではないですよ。もうまさに熟練の域ですね。谷澤/冒頭でもお話したとおり、交渉にはアサーティブ以外の技術も必要です。アサーティブは自己表現ですが、問題を抱えている相手と話すには、傾聴などの「聴く」ことにも配慮しなくてはなりません。佐藤/交渉においてアサーティブであることの大切さはわかりますが、その中でもクライアントにとって最大限の利益を引き出さなくてはならない。そこが少し難しいと感じています。大澤/クライアントにとっての最大限の利益とは、決してクライアントの望みをすべて叶えることではなく、双方が納得する落としどころを探すこと。クライアントとの内部交渉に、アサーティブが不可欠だと思います。コーディネーター/これまでコミュニケーションの力についてお話しいただきましたが、一般の方々が日常生活において活用できるヒントなどあれば、お伝えいただけますか。谷澤/まず、アイメッセージを取り入れるということ。「暇そうでいいわね」ではなく「私は今手伝ってほしい」と伝えるのです。同じ意味でも、伝わり方が違いますよね。 もう一つは、的を絞るということ。「もっと優しくしてほしい」「やる気を出してほしい」などはとても曖昧。人によってそれぞれイメージも違います。何をどれほど、いつまでにどうしてほしいのかを伝えるのが大切なのです。佐藤/その通りですね。「伝わっているだろう」「察してよね」ではなく、言語化して伝えるのがコミュニケーションにとって大切。言わないと伝わっていないことがほとんどですものね。コーディネーター/日常生活はもちろん、こういったよりよいコミュニケーションの力を通じて、佐藤さんは「静岡県司法書士会調停センターふらっと」の事務長として「コミュニケーションのチカラ」をどのように考えますか?佐藤/理想論になってしまうのですが、すべての事件において調停前置となってほしいと思っています。調停前置というのは、裁判をする前に調停を行うということで、日本の家庭裁判所ではこの調停前置が基本です。なぜなら、離婚や遺産相続などの紛争は、法律だけで白黒つけられるものではなく、それまでの背景も大きく影響するからです。裁判で「支払いなさい」と決まった場合の30万と、話し合った末に決まった30万円ではまったく意味合いが違うと思っていて、後者の方がより人間らしい解決になると思うんですよね。コーディネーター/それでは最後に、タイトルでもある「未来を切り開くコミュニケーションのチカラ」について、一言ずつお願いいたします。大澤/法哲学の井上達夫教授は「共生の作法」という著書の中で、コミューニケイション(原文引用ママ)には暴力性があると指摘しています。理屈で相手を説得するという行為は、ある種の暴力。でも、たとえ憎しみ合っていても「会話」はできるはず。それが、異なる考え方を持った人たちが共に生きる知恵なのだと説いています。 私たち法律家の仕事は、理屈を交えて説得することもしばしば。会話だけでは仕事にならないというのも正直なところです。ただそこには暴力性をはらんでいることを自覚しなければならない、そう感じています。谷澤/価値観も生き方も性格もキャラクターも、まったく違う多様な人の中で生き抜くには、コミュニケーション力がなければ大変。どこまで自分を出してよいのか、どこまで合わせなければならないのか。コミュニケーション力を磨かないと、本当に難しい世の中です。 また、同時に「言葉にしない権利」もあります。それもとても大切です。佐藤/気付かないことに気付ける、見えないものが見えてくる。これがコミュニケーションの力だと思います。コミュニケーションによって見えなかった相手の価値観やニーズ、主義主張がわかってきて、それに対して自分はどうなのかと、客観的になれる。相手についても自分についても、見えなかった部分が見えてきますよね。コーディネーター/それぞれ、コミュニケーションに対して違う世界観をお持ちでしたが、多くの部分で繋がっていることに驚いています。また同時に、自分がやってきたことは間違っていなかったということを実感されたのではないでしょうか。 この記事をお読みいただいた仲間たちや、一般の方々にもそう思ってもらえたら本望です。 本日はみなさま、誠にありがとうございました。日常生活でのアサーティブ活用法、そしてあなたにとってコミュニケーションの力とは5 vol.116 ホーツーあなたに寄り添う法律家静岡県司法書士会